[蔵の歴史]

雪の舞う能登半島で、
男は焼酎造りに挑んだ。


焼酎といえば、九州などの暖かな地域が本場。
雪の舞う能登での焼酎造りは未知の領域であった。
仕込みを行う能登杜氏自身、
日本酒造りのプロではあっても焼酎を仕込んだことがない。

試行錯誤の日々が始まった。そして妥協を知らないこの男は、
度重なる検証を重ね、ついに独自の手法を生み出したのであった。
その一つが、もろみの長期間熟成である。
温暖な地域では長くもろみを寝かせることができないが、
能登の風土に適した製法として公平は、
もろみの発酵に通常の何倍もの時間をかけた。

また、蒸留した原酒を長期熟成することにもこだわった。

「最低でも十年、熟成するまでは出荷するな」

蒸留酒である焼酎は、ウイスキー同様、長く寝かせば寝かせるほどおいしくなる。
醸造・発酵学の専門家として公平は、何がなんでもそれを実現したかったのだ。