[蔵の歴史]

長い長い時を経て
ついにのと焼酎が誕生した。


平成2(1990)年に公平がこの世を去った。
工場をあらためて見渡した息子たちは、
そこに父が残したかけがえのない焼酎が眠っていることに気がついた。

「そろそろ世の人たちに味わってもらおうか」
平成3(1991)年、会社が復活。焼酎の販売を再開することとなった。
タンクの封が解かれ、注ぎ口からこぼれる液体を見た瞬間、居合わせた者すべてが息を呑んだ。
というのも、長い眠りから目覚めた焼酎は未だかつてない酒に変身していたからである。

やわらかな琥珀色と清澄な香味。歳月がいざなうまろみや余韻。
焼酎でありながら、そこには焼酎をはるかに超えた世界が広がっていた。

なんだか作り話にも聞こえるが、すべて本当の話。
長い長い時を経て、公平の夢はついに実を結んだのであった。


魂を込めた酒が神様のくれた偶然に出会うとき、それは奇跡の一滴となる。
「のと焼酎」私が見守り続けた、一人の男と焼酎の物語である。